上顎前突による影響
審美的な問題による自信の低下や心理的ストレスだけでなく、発音が不明瞭になる(特にサ行・タ行)、噛み合わせ不良による消化不良、唇が閉じづらくなることによる口呼吸の習慣化、むし歯や歯周病のリスク増加などの機能的な影響もあります。
上顎前突(出っ歯)
一般にいう「出っ歯」のことで、上の前歯が下の前歯より飛び出している状態をいいます。上顎骨の過剰な成長で、上顎が下顎よりも大きくなった場合(骨格性)と、上の前歯が前方に極端に傾斜している場合(歯性)があります。矯正治療で治るケースもありますが、外科手術が必要になることもあります。
上顎前突出の原因はさまざまですが代表的な原因としては、遺伝的な骨格(上顎の過成長)、指しゃぶりや口呼吸などの成長期の習慣や癖、舌の位置異常や不適切な嚥下動作、
早期の乳歯喪失による歯列の乱れなどが挙げられます。
審美的な問題による自信の低下や心理的ストレスだけでなく、発音が不明瞭になる(特にサ行・タ行)、噛み合わせ不良による消化不良、唇が閉じづらくなることによる口呼吸の習慣化、むし歯や歯周病のリスク増加などの機能的な影響もあります。
上顎骨(じょうがくこつ)は、顔の中央に位置する大きな骨で、上あご(うわあご)を形成する骨です。解剖学的に見ると、以下のような特徴と役割があります。
左右一対の骨で構成されている
上顎骨は左右1つずつあり、顔の中央でつながって「上あご」を構成します。成長の途中で1つの骨のようにくっつきます。
歯を支える土台となっている
上顎骨の下部には「歯槽突起(しそうとっき)」と呼ばれる部分があり、ここに上の前歯から奥歯までの歯が生えています。
上顎洞(副鼻腔)を含む
空洞を持つ構造
骨の内部には「上顎洞(じょうがくどう)」という空洞があり、これは副鼻腔の一つです。風邪や副鼻腔炎で痛みが出ることがあります。
上唇や鼻の形にも影響している
上顎骨の前方の発達具合により、上唇や鼻の高さ、顔立ちにも大きな影響を与えます。特に「上顎前突出」ではこの骨の前方への成長が問題となります。
歯槽性上顎前突
歯槽性上顎前突とは、「骨格自体が出ている」のではなく、歯を支えている部分(歯槽部=しそうぶ)が前方に傾いていることが原因で上の前歯(前歯部)が通常よりも前に突き出している状態のことです。骨格性上顎前突出症と違い、骨の位置は正常ですが、歯の生え方や角度によって前突感(口元が出ている印象)が生じます。
歯槽性上顎前突出症は矯正のみで改善が見られることがほとんどです。
骨格性上顎前突
骨格性上顎前突とは、上顎骨そのものが正常よりも前方に突出している状態を指します。いわゆる「出っ歯」と呼ばれる症状の中でも、歯の傾きではなく骨格のバランスが原因で生じるものを指します。治療には矯正治療に加えて、上顎前歯部歯槽骨切り術やLeFort(ルフォー)Ⅰ型骨切り術が選択されます。
この手術は、「出っ歯」のように上の前歯が前に出ている方に行う方法です。両側の小臼歯(前から4番目の歯)を1本ずつ抜いて、そのスペースを利用して前歯6本を後ろに下げる手術です。最大で5〜6ミリ程度、前歯を後ろに移動できるため、見た目の改善に効果的です。
この方法は、奥歯のかみ合わせには影響を与えないため、場合によっては矯正治療をしなくても済むという利点があります。また、手術後の回復が早く、比較的すぐに普段通りの食事ができるのも特徴です。
ただし、抜いた歯の部分には少し隙間が残ることがあり、そのままにしておくと前歯にすき間ができてくる可能性があります。そのため、矯正治療や差し歯(補綴)などで隙間を埋める治療を追加することが多いです。治療の内容は歯並びやすき間の大きさによって変わります。
ルフォーⅠ型骨切り術は、特に、上顎を上に持ち上げたり、前に出したりするのに向いています。ただし、上顎を後ろに下げる(引っ込める)場合には、動かせる範囲に限界があります。これは、上顎の奥にある骨の構造や血管の走行が関係しているためです。患者様ごとに状態は異なるので、手術前には立体的な模型を作成して、「どれくらい動かせるか」をしっかりと調べてから手術の計画をします。
骨の近くに大事な血管や歯の根っこがある場合には、安全のために無理な移動はできません。こうした細かい点も、患者様一人ひとりの状態に合わせて慎重に判断していきます。
ガミースマイルとは、笑ったときに歯茎が大きく見える状態のことを指します。一般的に、笑顔のときに3mm以上の歯茎が見える場合にガミースマイルと診断されることが多く、見た目の印象にコンプレックスを感じる方も少なくありません。上唇を引き上げる筋肉が発達しすぎている、上顎の骨が前に出ている・長いなどの骨格的な問題、歯茎が過剰に発達している、歯の萌出不全、歯が小さい、などの原因でガミースマイルが生じます。ガミースマイルは、口腔内が乾燥して唾液による自浄作用が低下しやすいため、歯周病のリスクや口臭のリスクが高くなります。